筆者の前回投稿が2024年1月だったので、約1年ぶりの長いご無沙汰です。本日は方向性を変えて、モノにこだわったエッセイです。
自主レーベルまたはマイナー・レーベルの正確な定義は敢えて突き詰めませんが、これらの魅力をまとめると①「メジャーじゃないから、いいんだよ!この素人臭いアレンジや録音が、アーティストの最も生に近い姿を見せてくれるんだ」、②「誰も知らないお宝を発掘するのが、我々コレクターのミッションだっ!」と言うことになるかと思うのですが、既に諸先輩方のご尽力で全貌が明らかになりつつあるこのマーケット。②の意義は差し当たり脇に置いておきますが、①はやはり、否定できない魅力ではないでしょうか。きれいなストリングスや壮大なオーケストレーション、(当時は高価だった)シンセ系を被せて感動的な仕上がりになるのは、それはそれで素晴らしいのですが、目の前で演奏してくれるが如く、手作りのテクスチャーを味わうのは格別の楽しみがあります。
で、そんな楽しみを味わえるのが、自主レーベルまたはマイナー・レーベルの醍醐味でしょう。そもそもトラッド&フォークは、メジャー作品であっても、アーティストの生の姿を反映させるプロデュースの傾向が強いのですが、自主・マイナーレーベル作品では、表面の誤魔化しが効かず、アーティストの実力とエッセンスが更に生々しく剥き出しになります。なお、題名にあるように、いわゆる「英国本拠地」に限らず、「地方色」の強い作品も併せて紹介していきます!
*なお、ORDERページリンクにはそれぞれ試聴クリップもご用意しております!(ゆうらしあより)
1) Tickawinda “Rosemary Lane” Pennine

実力派No.1は、正にこれ。正統派トラッドとして非の打ち所がない名盤です。フェアポートやスティーライ、ペンタングルと同列と断言します。スペックは女性Vo.2台搭載で、ソロ、コーラスとも聴かせどころ満載の、とんでもない技巧的清涼派バンドです。奇を衒うことない正統派トラッド中心の内容でありながら、大変親しみやすく、またAnne Briggs「Go Your Way」のアレンジなど絶妙です。デビッド・ヒッチコックのプロデュースが入る前のメロー・キャンドルを聴いたことがありますが、そのゴリゴリのノリで、スティーライ・スパンを演奏した感じ、と言ったら伝わるでしょうか…トラッド&フォーク入門にも最適な一枚です。入門用に自主盤を推薦するなんて普通ありえませんが、こいつは例外中の例外です。見つけたら即買いをお勧めします。CD再発もありますが、原盤の音は桁違いのレベルです!
2) Vulcan’s Hammer “True Hearts And Sound Bottoms” Brown


モンスターとして斯界に君臨する、とんでもないギガレア盤。ただ、レア度なんか二の次です。一旦聞いたら、もう逃げられない深みにハマる事請け合い。ジャンルが違うので、言いたい事がどこまで伝わるか不安ですが、クリムゾンの「宮殿」を聞いてファンになった人が「太陽と戦慄」で拒否反応を示しながらも、結局は逃げられなくなるのと同じ…もしくは、クリムゾンと比べてフロイドはダレてるなぁ、なんて思っていた人が、エコーズとか狂気を聴き続けていたら、気付いたら後戻り出来なくなっていた感じ…(何のこっちゃ) 当初は「地味だ」「退屈だ」と感じながらも、徐々に脳を侵蝕され、女性Vo. に絡め取られて昇天します。爆音と言う意味ではなく、ヘヴィーなストロング・スタイルの本格トラッド&フォークです。
味わい深いテクスチャーの極薄ジャケ(インサート付き)は、裂け、破れ、シミ、汚れ等、ある程度は避けられませんが、こいつも見つけたら即買いをお勧めします。再発もありますが、CDの音質で、この感覚を味わえるとは到底思えません。
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3) Mabel Joy “On the Border” Folk Heritage


斯界では有名なレーベルで、傘下に子レーベルもありますが(Midas !)、間違ってもメジャーとは言えないFolk Heritage から出た一枚。彼らの2ndです。1stの表ジャケは粗い白黒で、ウルトラセブン最終回のアンヌ隊員のように、アーティストはほぼ真っ黒なシルエットで表情がよく分からない状況になっており、否が応にも期待が高まっていたのですが(何の?)、2ndのジャケで予想と全く違う印象を持たれた方もいらっしゃるのでは、と思います。でも、女性Vo.は1stと変わらず、どこまでも美しい。うっとりします。ランチ後、陽だまりでうとうとしながら聞いてくださいね。至福の時間をお約束できます。
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因みに1stのジャケはこれ。MABEL JOY 1ST

1stアルバムの*ORDERページへ*
4) V.A. “Folk Heritage” Wind Mill ( 1973年 )
関連レーベル含めたサンプラーです。

Mabel Joy繋がりでの紹介ですが…みんな、これで勉強した!これでコレクターになった!大昔の大学受験で言うと、豆単とかシケ単に相当する一枚。これに載ったアーティストを全部揃えると、一体いくらかかるのか、想像するだけで空恐ろしくなります。フォーカル・ポイント、ブルー・ホライゾン、ブルー・ウォーター・フォーク、ギャラリー、マイケル・レイヴン&ジョアン・ミルズ…等。しかし、見方を変えれば、これ一枚で、これらトラッド&フォーク・モンスターを俯瞰できる優れもの、と言えます!
5) Bran “Ail-Ddechra” Sain
よ、読めない…ウェールズ語…

ウェールズ地方からの渾身の一枚。他に2枚出してます。特筆すべきはメロトロンの嵐。ここまで来ると、フォークと言うよりプログレとしてカテゴライズすべきかも知れませんが、まぁ、いいじゃありませんか。皆さんだって、ルネサンスとか大好きでしょ?やはり、民族的ルーツの影響でしょうか、「英国」的ではない、「大陸」的なテクスチャーを感じます。
因みに、この時期にシングルも出してます。


筆者が入手したシングルには、なんと、ギタリストの一人が学校の友人に宛てたメモが入ってました。レコード出すに当たって、プレゼントするのを約束していたようです。この友人が本シングルを中古市場に出したんだね、きっと。
6) Pererin “Haul Ar Yr Eira” Gwerin
よ、読めない…でもアーティスト名は巡礼者(Pilgrim)と言う意味らしいです。

Branに在籍していた女性Vo.を含めて結成された、トラッド&フォーク・バンドの1st。他に2枚出してます。この分野のリスナーで、これを「嫌い」とか「好みに合わない」とか言う人はいないんじゃないでしょうか?フルートもいい味を出してます。正に、Hiraeth(郷愁とか叙情とか言う意味らしいです)。
この単語にピンと来た方は、同じくウェールズのアーティスト、Endaf Emlyn をご存知の筈。未聴の方、これも必聴ですよ!
7) Endaf Emlyn “Hiraeth” Wren

と言う流れで、これもご紹介します。彼の地では70年代を代表するSSWで、筆者の知る限りLP4枚とCD1枚出してますが、映画プロデューサーとしても活躍していると言う多才な人。1stであるこの作品の、触れれば壊れてしまいそうな繊細さは特筆すべきで、彼の最高作だと誰もが認めるでしょう。
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なお、実際には2nd「Salem」、3rd「Syrffio Mewn Cariad」(以上、Sainから)も、彼の持ち味である繊細なテクスチャーは1stと何ら変わらぬレベルで存分に味わえます。4th「Dawnsionara」(81年 Sain)、5th「Deiwedd」(CD、09年 Sain)は現代的なアプローチがなされているため一瞬たじろぎますが、よく聴き込めば、彼の本質は何ら変わっていないことが分かります。GBM的に気軽に楽しむにはむしろ、後期の方が適しているかも。
8) V.A. “Disc A Dawn” BBC
ウェールズのトラッド&フォークの当時のサンプラーです。( 1970年もの )

さて、折角、ウェールズの音楽に突っ込んだので、その絡みでご紹介します。レコード自体はBBC(!)から出ていますが、内容は表記の通り、本原稿の守備範囲と看做して構わないでしょう。「ウェールズの歌姫」Heather Jonesや、シド・バレットとの交流でも有名なMeic Stevens (あくまでも一部で有名、と言う意味ですが…)を始め、Sain とかWren とかのレーベル所属のアーティスト達がてんこ盛りです。
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written by GRM *
*ゆうらしあさんから、文責を明らかにするよう指導がありましたので、今後はこのペンネームを名乗ります。引続き宜しくお願いします。
p.s. (ゆうらしあより)
通販リストには今回紹介のレコード以外にもマイナー・レーベルのトラッド&フォークの好作品を色々取り揃えております。
各個別アイテムのページで試聴もできます。
(以下商品例)
a) GALLERY “EACH DAY THROUGH”
b) MIRK “MODDAN’S BOWER”
c) JANCIS HARVEY “TIME WAS NOW”
d) KEITH JAMES “SONGS”
e) PAUL KENT “SAME”

