若干の偏見をご容赦いただくとして(でも、当たっていると思いますが 笑)、ゆうらしあさんのページを訪れる方は概ね、扱っているジャンルのいくつかについて相当なマニアでいらっしゃるのだろうと思います。もう既にご自身の好きなものが分かっていて、もっと掘り下げてみたい、コレクションを充実させたい、と明確な意図を持っているケースが殆どでしょう。そんな方たちに向けて、
・レビューを書いたり、コレクションを披露したりするのはちょっと恥ずかしい。
・そもそも、偉大なる国内外の先達によって、レビューを含めた詳細かつ(ほぼ)完璧なガイドが既に完成されている。
・大っぴらに推奨することは控えますが、実際の音(の一部)を確かめたければ、ネット動画を検索することも不可能ではない。
こともあって、資料的価値とは違う方向性の読み物を思いつくままに、徒然に書かせていただいております。
さて「ルーツ音楽への誘い」も3回目と言うことで、今回は少し変わった視点からのエッセイです。話しをスムーズに進める関係上、冒頭の断り書きに続いて、筆者自身のことを少し記します。
筆者は1964年生まれ。前回東京オリンピックの年であり、安保や全学連闘争の影響のある年代です。もっとも、物心がついて意識的に音楽などを「聴く」「観る」ようになる中学校・高校くらいまでは、何となくテレビ(映画含め)やラジオから、音楽等を「聞く」「見る」だけでした。兄や姉がいれば、覚醒はもっと早かったかも知れません。それでも、時代を反映した尖ったものに、知らず知らずのうちに触れていたのは事実で、長じてアレア(伊)やRIO系などを抵抗なく聴くようになった遠因になっているかも(笑)。通っていた塾や予備校の先生(全共闘議長がいらっしゃいました…)の影響も否定できません。もちろん授業ではそんな内容は一切ありませんでした。当たり前ですが。
「いちご白書」の「サークルゲーム」は、中学の初め頃に触れましたが、当時はバフィ・セントメリーのバージョンが元気良過ぎと感じて、あまりピンときませんでした。長じてオリジナルのジョニ・ミッチェル、最近フォーカル・ポイントのシェリーちゃんのバージョンに触れ、今ではバフィ・バージョンも含めて大好きです。なお、もっと細かく言うと、個人的な好みでは、🎵ラウンド・アンド・ラウンド・アンド・ラウンド と単純反復の本家ジョニ・ミッチェルより、🎵ラア〜ウンド・アンド・ラウンド・アンド・ラウンド とコブシを効かすシェリーちゃんの方が好みです。これは私が、演歌に親しむ日本人だからでしょうかねぇ…(笑)
いずれにしても、筆者はバラード風味のアレンジの方が単純に好みだと言うだけの話しなのですが、ふと考えるに、好みとは、実は覚醒する前に耳にした音楽の影響が強いのではないか、と考え始めました。筆者は中学2年からクリムゾンや、ELP、イエスを意識的に聴くようななり、もちろん今でも愛聴していますが、何故、還暦近くになってトラッドやフォークに傾倒するようになったのか。特にUKのこの種のルーツ音楽について、様々な感想や考察を加えていくのが本ブログの趣旨ですが、ネタを考えながら、自然とリスナーである自分のルーツを探っていることに気がつきました。たまたまですが、UKルーツ音楽の追求が自分のルーツ探しに重なった、と言う訳です。ちょっと早いですが、精神的な終活の一環になっているのかなぁ、と思います。
さて、では筆者は覚醒前にどんな音楽に触れていて、どんな記憶が脳の海馬に蓄積されているのか。同世代の方々なら、きっと似たような経験があり、ご興味がある筈。
新宿西口や渋谷での騒乱を語るには筆者は若過ぎ、岡林信康を語るにはちょっと経験不足。加藤登紀子も尖った曲ではなく、普通にテレビに流れるものしか馴染みがありません。「幻野祭」も今は知識としては知ってますが、実際には知らないに等しいです。記憶に鮮烈なのは、やっぱり70年代に入ってからの、あの感覚です。闘争後の虚脱感・寂寥感と、熱かった当時を懐かしみながらちょっと言い訳するほろ苦さ。ディランを初めて知ったのも、ガロ「学生街の喫茶店」の歌詞でした。若いミュージシャンの奏でる新鮮な音の中にも、ちょっと屈折したニュアンスがあったりして。やっぱり、真面目さが顕著にあったんだよなぁ、当時は(今はない、とは言いません。違った形で表現されているのだと思います)。だから挫折感やどうにもならない焦り、やるせなさが自然に滲み出ています。
そんなテクスチャーの中で、当時小学生だった筆者が夢中になっていたのは、
ゴジラ映画。対ヘドラは、この時代でしかあり得ないサイケな作品です。その他、円谷プロ特撮もの。
森田健作や村野武範の青春ドラマ。高校生って何て楽しいんだろ!早く高校生になりたいと思ってました。
バタ臭いルパン三世とか、ちょっと危ないデビルマンやキューティー・ハニーなどのアニメ。
(本稿に関係ないので省きますが、キックボクシングやプロレス中継、スポ根アニメ)
若いお姉さんたちが奏でる、フォーク・ミュージック。
そう!長い前振りでしたが、やっと本題の登場です。大先輩である、R◯Mなどでも書かれていましたが、「メロキャンやフォーカル・ポイントが束になってかかってきても、ベッツイ&クリスやシモンズには敵わない。そこまで言うぞ」正確な引用ではありませんが、こんな感じの表記があり、筆者も大いに賛同する次第です。
例によって、個別のレビューは控えますが、以下のアーティストたちを懐かしく思う読者は多いのではないでしょうか。あ、これは個人的経験をベースにしたエッセイなので、あれが載ってない、これをリストアップすべきだ、と言うコメントや圧力はご遠慮くださいね。紙面の関係上、ジャケ写は割愛です。
ソロなら、金延幸子、佐井好子など。デュオなら(こっちが本稿のメインです)、
・ベッツイ&クリス* 「白い色は恋人の色」「花のように」「夏よおまえは」
*綴りはベッツィではなく、ベッツイですよ。読み方は、ベッツィで良いですが。
・ピンク・ピクルス** 「僕にさわらせておくれ」
**いかにも「狙ってる」アーティスト名と曲名だなぁ、とおじさんは思います。
・シモンズ「恋人もいないのに」「ふり向かないで」「ひとりごと」「若草の雨」「ふるさとを見せてあげたい」
・ウィッシュ「御案内」「六月の子守唄」「ただ愛に生きるだけ」「雨の日のポエム」
・たんぽぽ「嵯峨野さやさや」「縦縞のシャツを着て」「ひとつぶの涙」「小さな白いページ」
などなど。マイナーどころまでいくとキリがないので、ここまでにしますね。そして、小学高学年になると、オリビア・ニュートンジョン、カーペンターズ、そしてインスタントコーヒーCMでかかりまくったタニア・タッカー「ハロー、ミスター・サンシャイン」(かまやつひろし作曲)などから、洋楽へも進み始め、今では立派なコレクターになってしまいました…
その後、女性フォークデュオやグループは時代の変遷とともに、ピンクレディーやキャンディーズのようなアイドル路線に組み込まれていき、前述した70年代のテイストも消えていきました。そして、84年には綿密なマーケティングに基づいたおニャン子クラブが結成され、97年にはモーニング娘が、05年にはAKB48が出現しました…
では、上記の女性フォークデュオやグループに代表される若いお姉さんたちとつながる、UKトラッド&フォークの名盤をいくつか紹介しておきますね。ベツクリやシモンズがお好きな方を対象にしたセレクションです。その他の選定基準は、基本的に女性Vo. 2台以上搭載のスペックであること。ただし、女性Vo.二人以上でも、前回取り上げたメロキャンとかTickawindaなどのような完成度高過ぎの作品は、今回セレクションの趣旨に合わないので外してます。あくまで「そっと傍に置いておきたいLP(笑)」を列挙しています。例によって、ゆうらしあさんには本当にお世話になりました。

Merruwyne
ライブ作品。内容もさることながら、バックで歓声をあげるおやじどもが何とも言えません。地下アイドルのコンサート会場のようです。日本人も英国人も変わらんのだなぁ、と認識を新たにさせてくれる一枚。

Prelude
Dawnレーベルから3枚くらい出している同名フォークグループがありますが(こちらも良い)、別物です。

Clarke Sisters “Friendly Folk”
この、何とも言えない「隣りのお姉さん(の歌)」を楽しむ一枚。Merruwyne、Peludeと併せて、今回企画趣旨のどストライクです。

Heaven & Earth “Refuge”
UKではなく、USモノ(ちょっと反則)ですが、おすすめです。完成度高過ぎ、かな?(笑)

Harbour Folk “Waxies Dargle”
いなたい制服が何とも言えません。Preludeもそうですが…

Aleanna
ジャケの可愛らしさ&いなたさから音を想像すると、確実に裏切られる本格的なトラッド&フォークです。今回の趣旨を考えると、当初はセレクションから外そうかと思っていましたが…

Mac Murrough
ジャケの点描画が最高にかわいい。内容はもっと最高です。これも完成度高過ぎなのですが、この繊細さを「守ってあげたい」と勘違いするリスナーもいるのではないか、と思ってセレクトしました。

Coteries “A Swing To Folk”
リリースは69年。70年代と言うより、やはり60年代の影響を感じます。常に手許に置きたい一枚。

Folk77 “Try To Remember”
シモンズと言うより、女性のみの聖歌隊です。クリスマスに聞くと丁度良い。穢れがない、と言う観点からチョイス。

Cotswold Folk “Collection”
同上。どうでもいい話しですが、これのレーベル、デロイですぜ。

Piggleswick Folk “Pig In The Middle”
4名中3名が女性で、男含めて全員がコーラスを取ります。行儀の良い「村の集会」の雰囲気で「性を感じさせない」ため、物足りなく思うリスナーもいるかも知れませんが、この類に魅力を感じるケースは多い筈。

Settlers “Lightning Tree”
スペックの基準からは外れますが、あの名盤発表前のCindyがVo.です。バックのアレンジ・演奏ともにミーハーでいただけませんが、何故か手許に置いておきたくなる一枚。あ、これもYorkレーベルです。
さて!ここまでは単なるR◯Mの二番煎じであって、これで終わっては、この業界の雄である「ゆうらしあ」の名前が泣きます。ここから先はおそらく、未だ嘗て、誰も書いたことがない新しい視点です。
読者の中には、NHKラジオ「基礎英語」「続基礎英語」にお世話になった方も多いのではないでしょうか?私の時代は英語学習はほぼ全国的に中学生からだったので、基本的には各々、中1、中2向けと言うことなのでしょうが、筆者は小学高学年からお世話になっていました。そして番組の中で、英語に親しむと言う観点から「英語のうた」のコーナーがありました。取り上げているのは英米の民謡(正にトラッド&フォーク!)が中心で、知らず知らずのうちにこの手の音楽に親しんでいたのです!英国ならロッホ・ローモンド、グリーンスリーブス、スカボロフェア、米国ならマイ・オールド・ケンタッキー・ホーム、愛しのクレメンタイン、花はどこへ行った、などなど。有名アーティストも手がけるような曲の宝庫でした。こんなところで、現在の素地が刷り込まれていたんですね…と言うことは、このラジオ教育番組のお世話になった人は、私のようなコレクター、もとい、英米トラッド&フォークの愛聴者になる可能性があると言うことかも知れません。

※ 勉強のためだと称して(嘘ではない)、親に買ってもらったカセットテープ教材
なお、どうでもいい話しと言うか、顰蹙ものなのですが、筆者も立派な「中2病」に罹患していた時期があり、サイモン&ガーファンクルなどの著名アーティストたちが取り上げ、フォーカル・ポイントのシェリーちゃんも歌っていたスカボロフェア
🎵 Are you going to Scarborough Fair ? Parsley, sage, rosemary and thyme
を、こともあろうか、
🎵あ〜ゆ〜ご〜いんとぅ すか〜◯ろ〜ふぇあ すか◯〜ろ〜臭いよ〜
などと仲間たちとこっそり授業中に歌ってふざけていました。未だにフォーカル・ポイントの原盤が手に入らないのは、この時の天罰なのだと、結構本気で反省しています…
更に、印象的なハイドン「時計」で始まる、日本短波放送「百万人の英語」と言う教育番組もあって、英語の言い回しを勉強する目的で「English Through Music」と「English Through Movies」と言うコーナーがありました。前者は小林克也氏がパーソナリティを務めており、どちらかと言うと米系のヒット曲が多く採用されていましたが(ベストヒットUSA!)、ジェネシス「Follow You Follow Me」なんかも取り上げられたことがありました。忘れられないのは、このコーナーでは毎年末、取り上げた曲の年間ベスト10投票を行っていたのですが、79年はリタ・クーリッジ「あなたしか見えない Don’t Cry Out Loud」がトップを飾りました。この年は、ビレッジピープル(YMCA)や、ビージーズ(ディスコ路線の絶頂期)、ドナサマー、ロッド・スチュアート(Da Ya Think I’m Sexy?)などキラ星のようなディスコ系ヒット曲があって、これらも取り上げられていたのですが、何と、ベスト1は「Delta Lady」こと、リタ・クーリッジですよ。日本でも多少はヒットしたとは言え。小林克也氏も「教育番組の百万人の英語らしい結果だ。こんなベスト10があって良い!」と興奮気味にコメントしていました。リスナーの多くは音楽フリークではなく、英語の勉強のためにこの番組を視聴していた訳で、ブンチャカしたディスコ調のヒット作より、大人しくて英語自体が聴きやすい本作を選んだと思われますが、ただ、私は若干異なる視点を持っています。この頃はリタ・クーリッジもヒット狙いでデビュー当時のオリジナルの雰囲気は薄まっていますが、彼女は米南部ルーツ音楽の申し子なのです。レオン・ラッセルが書いた「Delta Lady」は彼女へのオマージュです。結論!NHK基礎英語で米英ルーツ音楽に触れたリスナーが、次ステージの教育番組である百万人の英語を視聴し、音に馴染みのあるこの曲に投票したとは考えられないでしょうか?更に言うと、リタを好きになった人は、いわゆるスワンプ系を愛聴する素地を持っている、とは考えられないでしょうか?ゆうらしあさん、一般に考えるより、我々のマーケットは広いかも知れません!Andwellaとか、Andy Roberts、Southern Comfortなど聴かせたらコレクターになるのではないでしょうか?(笑)
